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登山年月日 | 2011年 9月 5日〜 7日 |
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参加人数 | 大人 2人 |
日程 | 二泊三日 |
天候 | (一日目)雨 (二日目)雨のち晴れ (三日目)晴れ |
距離 | (一日目) 4.2Km (二日目)11.0Km (三日目) 7.2Km |
時間(休憩を含む) | (一日目) 3時間00分 (二日目) 7時間10分 (三日目) 5時間10分 |
スタート地点標高 | 1850m (栂池自然園ビジターセンター) |
最高点標高 | 2932m (白馬岳山頂) |
ゴール地点標高 | 1240m (猿倉) |
標高差(最大) | 1692m |
累積標高 | +2068m、-2691m |
気温 | 2℃ (三日目:白馬山荘前 午前 6時 0分頃) |
(※ 標高、距離には誤差が含まれます)
9月に入り、山の喧騒も少しずつおさまってきました。
山は秋の気配に包まれる頃です。
少し遅い夏休みを取り、山小屋二泊の行程で3000m級の山に挑戦することにしました。
折り悪く台風12号が日本列島を直撃し、日程の調整を余儀なくされてしまい、計画も二転三転しました。
台風の動向を見ながら、北アルプス後立山連峰の最高峰である白馬岳への山旅を選びました。
首都圏から北アルプスへのアクセスは、昔ならば中央本線で新宿から夜行列車を利用するのが定番でした。
1998年に開催された長野オリンピックに合わせ、新幹線が東京から長野を直結し、高速道路などの自動車道も整備され、今は新幹線を利用したアクセスも可能になりました。
季節限定の夜行列車を使わない場合、我が家からは新幹線を利用するのが白馬方面への近道になります。
長野駅から特急バス長野−白馬線に乗車して栂池高原で下車しました。
長野からは国道19号線を通り、途中で白馬方面に分岐する有料道路を通って一時間ほどで白馬村に到達します。
そこからは白馬五竜、白馬駅、白馬八方、岩岳新田とこまめに停車して白馬大池駅付近から急な登り坂を経て栂池高原に到着します。
長野駅では青空も見えたものの、栂池高原では重い雲が覆っていて山頂付近はすっかりガスに包まれていました。
ゴンドラリフトとロープウェイを乗り継いで登山口の栂池自然園に向かいます。
スキーシーズンに利用したことはありますが、夏季の利用は初めてです。
栂池高原のゴンドラリフトには「イブ」の愛称が付いています。ちなみに八方尾根スキー場のゴンドラリフトは「アダム」です。
ゴンドラリフトの終点「栂の森駅」に降り立つと、雨が降っていました。
ロープウェイ乗り場までは徒歩3分ほどですが、ここでレインウェアを着用し、雨中の登山に備えます。
登山用の雨具は、強風下の雨でも体を濡らすことはありません。
用具の進化に感謝です。
この時期、ロープウェイは20分間隔で運転されているようです。
乗り場には大雨警報、雷注意報などが掲示されています。
雨は防げますが、雷は駄目です。
ここ数日の雨の量で登山道の状況も心配ですが、危なければ撤退することも考えて山に入ります。
ロープウェイに乗って5分ほどで自然園駅に到着します。
登山口の手前の山荘で昼食です。
管理人は「山菜うどん」を、妻は「豚丼」を注文しました。
自動販売機で食券を購入すると同時に、厨房へその情報が自動送信される画期的なシステムに驚きました。
霧に煙る栂池自然園ビジターセンターです。
栂池自然園は遊歩道が整備されて散策を楽しめます。
雨にも拘らず、観光客の姿がありました。
登山道は、ビジターセンターの脇を抜けた所です。
この時点では登山道に向かう登山者は見当たりません。
登山道は十分整備されていますが、泥濘や濡れた岩はとても滑り易いものです。
足下に注意して慎重に歩を進めます。
上りが緩やかになると、開けた岩場に到着します。
目印に沿って迷わないように注意して先に進みます。
ここからは再び急な岩場を登って行きます。
岩場を登り詰めると
天狗原を過ぎると大きな岩の岩場を登ります。
バランスを崩さないように注意して、場所によっては三点支持をしながらよじ登って行きます。
途中、小さな雪渓を渡ります。
ロープが張ってありますが、斜面は緩やかなのでロープを使わなくても歩くことが出来ます。
雪渓を越えると再び岩場を登って行きます。
正しくは乗鞍岳ですが、北アルプス南部の乗鞍岳と区別するため、白馬乗鞍岳あるいは白馬乗鞍と呼ばれています。
本当の山頂は標識の場所ではなくピークは2469mですが、2436.4mの三角点も他の場所にあり、何かややこしい山です。
地図によると登山道の途中に三角点があるはずでしたが、見つけることは出来ませんでした。
数羽のホシガラスが低空飛行で迎えてくれました。
白馬乗鞍の広い山頂付近を進むと、霧の中に白馬大池が浮かんできました。
天気が良ければ、もっと早くからはっきりと見えるはずです。
白馬大池の池畔にはチングルマが群れています。
綿毛の季節のはずですが、雨に濡れて縮こまっているようでした。
この日の宿に到着しました。
天候が悪く思いの外、時間が掛かってしまいましたが、15時前には到着できました。
宿帳に記帳を済ませて、荷物を降ろします。
宿の食堂は、食事時間および準備時間以外は談話室として開放されています。
売店で缶コーヒーとパンを買って、くつろぎます。
ストーブの火が冷えた体を暖めてくれます。
夕食はカツカレーです。
ご飯とルーはおかわり自由ですが、我々にはこれで十分な量でした。
食後は、雨が上がっていたので宿の周りを散策して写真を撮ったりして過ごしました。
でも、寒さのために長時間は外に居ることができませんでした。
前の晩は午後7時前には床に入って寝てしまいました。
夜中までぐっすりと眠り、その後は時々目を覚ましましたが睡眠は十分です。
入口をカーテンで仕切られた4畳間の部屋は、宿泊者10名で相部屋にはならず、広く使うことが出来ました。
荷物の整理も楽々と出来ました。
朝食は5時30分、丁度良い時間です。
二日目は愈々白馬岳に向かいます。
白馬大池山荘前のテント場には一張のテントがありました。
食事前にはもう二張ほどあったのですが、すでに出発されたようです。
宿を出てすぐに上りに差し掛かります。
振り返ると、朝日に照らされた白馬大池が見えました。
白馬大池から登って稜線に出ます。
白馬岳も見える展望の良い場所、のはずですが雲に包まれて何も見えません。
この先の雷鳥坂も激しい風雨でライチョウの姿は見られませんでした。
稜線上の展望はまったく利かず、横からの強風と雨に煽られ、山頂のように見えるいくつものコブに騙されながら、ようやく小蓮華山に到着しました。
この山頂部は2007年に崩壊し、立入が禁止されています。
小蓮華山の三角点です。
登山道のロープの外にあり、触れることは出来ませんでした。
長野、富山、新潟の県境にあるため三国境と呼ばれます。朝日岳方面への分岐路があります。
ここまでの登山道は台風下の強風域並みで、風速15mは超えていたと思われます。
三国境手前の鞍部では、時折吹く突風に体が持っていかれるほどで危険を感じました。一歩間違えれば谷底に突き落とされます。
雨は殆ど無くなりましたが、風により体が冷えるので、途中でレインウェアの下にフリースを重ね着しました。
三国境を過ぎると、やっと天候が回復して太陽が顔を出しました。
歩いてきた稜線を振り返ると、小蓮華山までの道が良く見えます。
ここまで全く見えなかった白馬岳が姿を見せました。
目指す山頂は、もうすぐです。
激しい風雨の中をひたすら登って、ようやく白馬岳山頂に到達です。
周囲にはまだ雲が残っていますが、山頂は強い陽射しに覆われていました。
白馬岳山頂から剱岳が見えます。
残念ながら雲に覆われて、他の山は見えませんでした。
白馬岳山頂には一等三角点があります。
白馬岳山頂から下ってくると、日本最大級の山小屋「白馬山荘」に到着します。
白馬大池から約4時間、少し早い時間ですが昼食をとることにしました。
白馬山荘に併設されたレストラン「スカイプラザ白馬」でハヤシライスを注文します。
とても標高2800m超とは思えない雰囲気です。
昼食を済ませて、白馬三山のひとつ杓子岳に向かいます。
昼を過ぎると再びガスが掛かってきました。杓子岳山頂は見えません。
風が強く吹く中、稜線を進みます。
時々雲が晴れて杓子岳山頂が顔を見せます。
白馬鑓ケ岳への分岐から杓子岳への上り坂に入ります。
少し行くと急なガレ場の斜面になりますが、一歩足を踏み出すと途端に岩が崩れてきます。
一日歩いて体力を消耗していることもあり、危険を感じて登頂は断念し、ここで引き返すことにしました。
稜線を折り返し、白馬山荘まで戻ってきました。
部屋に入る前にスカイプラザでコーヒーとケーキを注文して一服しました。
部屋は6畳の個室です。
もちろん混雑時は相部屋になりますが、この日は二人で占有できました。
敷布団5枚に掛け布団10枚が用意されているので、繁忙期は10人が雑魚寝となるのでしょうか。
午後5時から夕食が始まります。
高山の宿とは思えないほど充実した献立に満足です。
寒いので暖かい味噌汁は助かります。
夕食後は、またまたスカイプラザで過ごすことにしました。
甘いものとコーヒーで一日の疲れを癒します。
コーヒーを飲んでくつろいでいると、窓の外の雲が晴れてきました。
強風の吹く中、外に出て撮影を始めました。
夕陽は既に旭岳の向こう側に沈んでしまいましたが、素晴らしい情景が広がっていました。
雲は次々と流れ、遂に槍ヶ岳と穂高連峰が姿を現しました。
手がかじかんで動かなくなってきたので、ストーブのある談話室で体を暖めてから部屋に戻りました。
朝食前に星を見に外へ出ました。
風は強いものの、不思議と昨夕ほど寒くは感じません。体が慣れてしまったのでしょうか。
この日の朝は氷点下まで気温が下がり、洗面所の水道は凍ってしまいました。
星空の写真は、もっとじっくりと撮影すればよかったのですが、長時間露出の待ち時間に耐えられず中途半端なものになってしまいました。
一度談話室に入って暖をとり、明るくなるのを待って再び外に出ました。
朝食までの二十分ほどの時間、撮影に没頭していました。
八ヶ岳、富士山、南アルプス、槍ヶ岳、立山、剱岳、白山などが見渡せます。
白馬山荘から少し下の白馬岳頂上宿舎に、ヘリコプターが荷物を運んでいました。
当初の計画では、下山は来た道を折り返す栂池自然園への道を考えていました。
しかし、時間が掛かりそうなことと岩場の道を再び下りることが億劫なこともあって、大雪渓を下山することにしました。
大雪渓は落石の危険が大きく、特に下りには利用したく無かったのですが、体力と相談して変更したのです。
もちろん不測の事態を考慮して、軽アイゼンは持参していました。
夏の初めには一面に花が咲き誇るお花畑の中を下って行きます。
まだ咲いている花もありますが、盛りは既に過ぎてしまっていました。
咲き残っていたのは紫色の花でした。
花びらが縮こまってしまい、何の花か判別できませんでした。
葉の形から調べれば分かるかもしれません。
登山道の途中には緊急避難小屋があります。
天候の急変時などに利用するものでしょうか。
ようやく大雪渓が見えてきました。
でも、まだまだ辿り着きそうにありません。
一年のうちで大雪渓が最も小さくなる季節です。
大雪渓の上部に当たるのが葱平ですが、この時期には雪渓はここまで伸びていません。
また、葱平の上の小雪渓トラバースもありません。
夏道も落石の危険からは免れません。
上方にも注意して耳を澄まして慎重に通過します。
休憩をすることも許されません。
夏の登山道は、所々に沢を渡る箇所があり、木の板の橋が架けられています。
愈々大雪渓に入ります。
6本爪の軽アイゼンを取り付けて、慎重に下ります。
9月の大雪渓には急斜面が無いので、怖さはありません。
それでも、アイゼンを使ってゆっくりと進みます。
雪上には大小の岩が転がっていて、落石の怖さだけは残ります。
また、雪の裂け目や穴などにも注意して、目印の道筋を外さないように歩きます。
大雪渓は30分足らずで終わり、登山道を進みます。
途中、大雪渓の下端付近の短い所を通りますが、アイゼンなしでも歩けます。
白馬山荘を出て4時間ほどで、大雪渓の末端にある白馬尻に到着しました。
気温は大分上がっています。
ここで、小休止をとり上着などを脱ぎました。
白馬尻を出て暫くすると林道に出ます。
途中に砂防工事をしている箇所があり、大型のトラックが行き交うので、注意が必要です。
鑓温泉へ向かう登山道の入口です。
猿倉は、もうすぐそこです。
長い下りを終えて、ゴールの猿倉に到着しました。
山小屋二泊の行程も、無事に歩くことが出来てほっとしました。
事前に調べた時刻では、12時30分発の白馬駅行路線バスがあるはずです。
丁度良い時間に到着した、と思っていたところタクシーの運転手さんから「今日はバス来ないよ。」と声を掛けられました。
「えっ?」とバス停の時刻表を見ると、9月3日以降は土休日のみ運行の旨の記載がありました。
この日は平日です…。
バスが来ないので、タクシーで白馬駅に向かいます。
それにしても、声を掛けられなければ来ないバスを待っていたことになります。
交通機関の運行状況は、しっかりと調べておかないといけません。
反省とともに、タクシーの運転手さんには感謝です。
この日は午後になっても天気が崩れることはありませんでした。
日程が一日でもずれていれば、もっと愉しい山行になったのですが、こればかりは仕方がありません。
麓から見る白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳の白馬三山です。
昼食は駅前で済ませて、帰りの長野からの新幹線指定席を取ろうと思ったところ、予想外に混雑していました。
遅い時間の列車しか空いていません。
どうせ遅くなるならと、長野まではバスに乗らずにリゾート列車を利用することにしました。
ビールとつまみを買い込んで、夕暮れの北アルプスを眺めながらの列車旅は格別でした。