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登山年月日 | 2013年 9月 9日 |
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参加人数 | 大人 2人 |
日程 | 日帰り(前泊) |
天候 | 晴れ |
距離 | 10.7Km |
時間(休憩を含む) | 7時間34分 |
スタート地点標高 | 2032m (北沢峠) |
最高点標高 | 3033m (仙丈ヶ岳山頂) |
ゴール地点標高 | 2032m (北沢峠) |
標高差(最大) | 1076m |
累積標高 | +1368m、-1368m |
気温 | 14℃ (北沢峠 午後 0時40分) |
(※ 標高、距離には誤差が含まれます)
夏の終わりに、ひと山登っておきたいと山岳雑誌やガイドブックを捲っていました。
この時期、長期の休暇は取ることができません。
一泊程度で登ることのできる高い山に的を絞って、初めての南アルプス山脈から3000メートルを超える仙丈ヶ岳に決めました。
路線バスでの移動時間が長く、登山口までのアクセスは簡単ではありませんが、その分、南アルプスの奥深さを感じることができます。
登山の前日、JR甲府駅から登山口の山小屋まで移動します。
まずは正午発の路線バスで南アルプスの山岳基地、広河原に向かいます。
甲府市街を抜けたバスは御勅使川(みだいがわ)の扇状地を遡り、マイカー登山者のために用意された芦安駐車場を経て夜叉神峠をトンネルで抜けると、早川の深い谷を見下ろしながら狭い悪路を進みます。
市街地の外れから降りだした雨は、山間の道に入っても降り続いていました。
甲府駅から2時間弱で到着した広河原には、インフォメーションセンターがあります。
ここで登山届を提出してから北沢峠に向かうバスに乗り込みます。
雨は時折強く降っています。
広河原から約25分で仙丈ヶ岳と甲斐駒ケ岳の登山口、北沢峠に到着しました。 バスを降りて、林道に面した山小屋が今夜の宿泊地です。
山小屋の一階に用意された部屋は、いわゆる蚕棚の寝床ですが、一人分のスペースはカーテンで仕切ることができます。
枕元には各人用に読書灯があるのも嬉しい配慮です。
また、二階の部屋は大部屋になっているようです。
移動日のこの日、長い時間バスに揺られて意外に体力を消耗していました。
冷えたビールをお供に、おいしく頂きました。
登山当日の朝食は、インスタントの白飯です。
小屋に朝食を頼んでいなくても、早朝から味噌汁が振舞われました。
夜中まで降っていた雨は上がっていましたが、樹木の葉からは雨水が滴り落ちています。
ザックカバーとレインウェアの上衣、スパッツを着用して準備を整えます。
夜明け前、濃い霧の立ち込める中、ヘッドランプを点して出発です。
この8月(2013年)には山小屋周辺や登山道での熊出没情報もあり、熊鈴は必需品です。
※途中には山小屋があります。休憩など計画的に利用しましょう。
砂利道の林道から登山道に入ります。
ヘッドランプで照らさなければ案内札の文字は読めないほどの暗い道です。
深い森の中に歩を進めるのは、なかなか勇気のいる行動です。
私たちと同じ道を行く登山者はいませんでした。
しばらく下りの道が続き、大平山荘に着きました。
山小屋の窓から漏れる明かりは無く、人の気配はありませんでした。
空は薄っすらと明るくなってはきましたが、夏の葉に覆われた森の中はまだ暗い道です。
大平山荘前の開けた場所から、再び暗闇の中に足を踏み込みます。
ライトが無くても歩けるくらい明るくなりました。
しかし、相手(熊?)にこちらの存在をアピールする目的でしばらくはヘッドランプは点けたままです。
効果のほどは分かりませんが、気持ちの問題です。
蜘蛛の巣を手で払いながら歩く道は、私たち以外に足を踏み入れていない証しです。
日の出の時刻を過ぎて、周囲は大分明るくなりました。
しかし霧の中の道は陽射しが届くことはありません。
道には泥濘(ぬかるみ)もなく、雨上がりにしては歩きやすい道です。
途中に大滝展望台への入口がありましたが、通行止めとされていました。 地図にも掲載されていないので、入らないほうがよいでしょう。
森の道にも薄日が射し込むようになりました。
雨に濡れた木の根はとても滑りやすく、注意が必要です。
樹林帯から沢を見下ろす道に出ました。
途中には崩落箇所があり、迂回路が整備されています。
振り返ると標高2685mの鋸岳の南西面が見えていました。
登山道は沢の傍まで降りてきました。 水の流れが心地よく耳をくすぐります。
三本の丸い木材で組まれた橋で、沢の右岸から左岸に渡ります。
水の流れの近くには、雪渓の名残りがありました。
斜度の大きな場所は砂地の路面が滑りやすいためロープが掛けてあります。 しかし、ロープは細く心許ないので使わないようして、一歩一歩ゆっくりと上りました。
沢の流れの向きが変わり、後方には標高2967mの甲斐駒ヶ岳の大きな山塊が姿を現しました。
沢には対岸から幾筋もの小さな流れが滝を作って流れ込みます。
夏の花の盛りは過ぎていましたが、トリカブトなどの花は綺麗に咲いています。
沢の道にも強い陽射しが射し込みます。 前方上空は青空が広がり、山頂での展望に期待が膨らみます。
左手の沢の対岸から小仙丈尾根五合目に続く道が合流します。
仙丈ヶ岳山頂へは右手の馬の背方面に入ります。
藪沢を離れ馬の背に向かって上りの道を進みます。 ニホンジカの食圧から高山植物を守るために設置された防護柵の中を歩きます。
仙丈ヶ岳から北に延びる尾根が馬の背です。
馬の背に上りきる手前に位置する山小屋が馬の背ヒュッテです。
ゆっくりと歩いてきましたが、ここまではガイドブックに掲載された標準タイムとあまり変わらずに上ってくることができました。
登山道脇には、紫色のトリカブトが綺麗でした。 トリカブトにも幾つか種類があるようですが、詳細は調べ切れていません。
馬の背の登山道、丹渓新道を右に分けて、左手の仙丈ヶ岳に進みます。
馬の背の道はハイマツや実をつけたナナカマドに囲まれています。
ナナカマドの実です。
ハイマツ帯に入り展望が開けてきました。
正面奥には仙丈ヶ岳の山頂が見えます。
馬の背の道の右手には、広大な雲海の果てに北アルプス槍・穂高連峰が見えていました。
前日は天候に不安はあったものの、雲の上に出てしまえば中央アルプスから北アルプスまでの眺望が開けていました。
森林限界を超えて、低木のハイマツとシャクナゲを分けて道を進みます。
仙丈ヶ岳の藪沢カールの中には小さな沢があります。
水を求めてホシガラスが沢に降りてきました。
ハイマツの実を加えて飛ぶ姿もあり、何羽ものホシガラスやイワヒバリが忙しそうにハイマツ帯の上空を滑空していました。
藪沢カールの中、標高約2900mに位置する仙丈小屋に到着しました。
小屋のベンチに腰掛けて休憩します。
仙丈ヶ岳の登山道では山頂に最も近い山小屋で、眺望は抜群です。
少し風が出て肌寒く感じ、中間着を一枚追加しました。
仙丈小屋からは小仙丈ヶ岳への道が分かれています。
目指す仙丈ヶ岳の山頂は、もうすぐです。
砂礫の道は滑りやすく、一歩一歩確実に踏んで上ります。 標高も3000mに迫り、息を整えながら上ります。
山頂の近くから西に延びる尾根道に分ける道があります。
振り向けば、甲斐駒ヶ岳と同じ高さまで上ってきたことが分かります。 甲斐駒ヶ岳は今にも雲に飲み込まれそうでした。
山頂近くの標高3000m付近にも小さな花が咲いています。 高層の強風を避けるように、岩陰にひっそりと咲いていました。
仙丈ヶ岳の山頂は、もう目の前です。
登山口から5時間近くを掛けて山頂に辿りつきました。
標高は3000mを超えていますが、休んでいればそれほどの息苦しさは感じません。
雲海に浮かぶ中央アルプスから北アルプスの眺望が素晴らしいものでした。
山頂から南には大仙丈ヶ岳に続く道があります。
楽しみにしていた北岳の眺望ですが、残念ながら雲に隠れて3000mの稜線は見えません。
山頂からの眺めを十分に堪能して、下山します。
仙丈ヶ岳から小仙丈ヶ岳まで、左に藪沢カールを臨みながら稜線の道を歩きます。
稜線の道から藪沢カールを見下ろします。 カールの中にある仙丈小屋の位置関係がよく分かります。
正面には北岳が見えています。
稜線の道から振り返り、仙丈ヶ岳山頂を仰ぎ見ます。 右側のコブが仙丈ヶ岳の山頂です。
仙丈小屋に下る道が左手に延びています。
ハイマツの茂みの中に雷鳥の姿を見ることができました。
しばらく様子を見ていると、一羽がハイマツの中から飛び出して少し下の斜面に降り立ちました。
飛ぶのはあまり上手ではありません。
三羽のライチョウが斜面を転がり落ちるように後を追っていきました
背の低い草花をついばみながら四羽のライチョウが仲良く歩いていきました。
稜線の道には岩場もあります。
岩場を乗り越えて、道を進みます。 この先にも岩場がありました。
稜線の道ではライチョウを見ていたりしながら歩いていたので、少し時間が掛かってしまいました。
標高は地図やガイドブックで確認すると2864mですが、山頂の表記は何故か2855mとありました。
記念撮影だけして、早々に下山します。
この先は尾根道を下ります。 行く手の道はガスに包まれています。
小仙丈ヶ岳の尾根道にも沢山のナナカマドが実をつけています。
道は細かい石や砂で覆われて滑りやすい状態です。 特に下りは注意しなければなりません。
六合目まで下りてきました。
六合目を過ぎると樹林帯に入ります。
賑やかに標識が並ぶ大滝ノ頭は、仙丈ヶ岳登山道の五合目です。
馬の背への道が左に分けています(写真は麓側から尾根の上方を見たものです)。
四合目です。
三合目です。
薄っすらとガスの掛かった樹林の道が続きます。 『山歩き』も終盤に掛かり疲れが溜まっているので、怪我をしないように気をつけます。
8月10日(2013年)に熊が目撃されたのがこの辺りでしょうか。 周囲に気をつけて下ります。
二合目を過ぎると、上りの道になりました。 露出した木の根に足を滑らせないように注意して歩きます。
一合目です。 看板には現在(2013年9月)は伊那市となった「長谷村」の文字が見えます。
北沢峠の登山口です。
標高差1000m以上を一日で上り下りして、脚の疲れが出ています。
特に膝には大きな負担が掛かったようでした。
山頂近くは天候もよく、間近に甲斐駒ヶ岳や北岳を見ることができて楽しい『山歩き』になりました。
北沢峠の公衆トイレの壁に掲示されていた熊目撃情報です。 比較的頻繁に目撃されているようです。